『ぼくのエリ 200歳の少女』
これはとても静かなお話。
しーーーんと静まり返る中で、僅かな音が聞こえる、言葉よりも目に見えるものが、
とても刹那的なもので、儚くて、あどけなくて、美しい作品。
洋画なので、日常から離れるには、とてもいい作品。
観終わった後、自分の生活を振り返ってみて、なんとも言えない、切なさがこみ上げてきました。
洋画なのに、観ていると、引きこまれ、とても身近なお話に見えてくるのが、
不思議であり、ドキドキさせられます。
途中、自殺する女性が出てくるのですが、その前の発狂したような暴れ狂う様子から、
自分自身の身の変化に対しての、
絶望や混乱、悲しみ、と、多分怒りもあると思います、など、複雑な心理状態を
「わかる」なんて、軽々しく言うものじゃないと思うんですけど、
観ていると、その感情の欠片だけでも、理解できるような気がするんです。
そして、歳を取らないエリ、彼女と生きていくオスカー、そのエンディングから、
序盤、エリとともに居た男性が、のちのオスカーのような連鎖になっていくような気がしました。
その男性が、エリに言ったお願いから、彼とエリの特殊な関係性の片鱗を見たような気がします。
夜のシーンが多く、物音があまりないので、全編通して、本当に静かです。
だからこそ、見えないはずの心の交流が観ている観客に届くのではないかと思います。
原作の小説があるそうなので、そちらも、読んでみたいな、と思います。
やはり、一度観ただけでは、どういうことだろう? という点があるので、
原作を読んで、補完したいなぁと思います。
また、『モーリス』というハリウッドのリメイク版もあるそうなので、機会があれば、
みてみたいと思います。
『モーリス』のブルーレイ版には、未公開シーンがあるそうで、
少女の衝撃的な過去が収録されているそうです。
印象深いのは、エリの灰色の瞳と積み重なった過去を彷彿とさせる表情や仕草、
そして、オスカーの、この瞬間の切なさとあどけなさ、幼い純真さが、
心に残っています。
雪の中のシーンが、映像としての静けさを増しているような気がします。
寒さと、ことり・・という音もしないような静けさが、
深い闇をより深くしているような気がします。
とても、すてきな雰囲気のある、映画でした。
また、もう一度、この世界に浸りたいと思います。